【レビュー】ゼロ・グラビティ(原題:GRAVITY) その弐  またはこの映画は如何にして心配するのを止めて無重力を愛するようになったか

その壱の続きです。タイトルはごめんなさいテキトーです。
今回は『ゼロ・グラビティ』のストーリー以外の魅力について書いていきます!

印象的なオープニング

この映画、オープニングがかなりカッコイイんです。なんとなくスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』を思い出すんですよね。『2001年宇宙の旅』では、映画本編の前に、真っ暗な画面の中、不気味なうめき声というか、どよめきのような音楽がずーっと流れるんですが、昔の映画館でよくあった「入場曲」ですね。で、映画が始まると太陽・地球・月が宇宙に浮かんでいる映像がバっと映る!そして流れるテーマ曲「ツァラトゥストラはかく語りき
もう鳥肌立つほどめっちゃかっこいい!!!大好きなんですこのオープニング。
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で、『ゼロ・グラビティ』も真っ暗な画面で始まり、タイトルの『GRAVITY』の文字が映され、重低音の音楽が流れてきます。そして音量がどんどん大きくなって、あーもううるさい!ってなったとこでいきなり無音になり、宇宙から見た地球の映像に切り替わる。
うおー!かっこええええ!宇宙空間の静けさが際立つ最高のオープニングです。
そしてここから13分間のロングカット。今まで観たこともない脅威の長まわし。何も知らずに観たときはあまりの衝撃で心の中で「スゲえスゲえ」を連発しておりました。え、まだ切れてないよ!まだ続いてるよ!そんな感じ。
そういえば同監督の『トゥモロー・ワールド』も長まわしが半端ない映画だったと今更ながら思い出し、更に進化した今回の映像に感動を覚えました。
このオープニングが3度も映画館で見れて本当にうれしい。今なら脳内再生できるよ。



どうやって無重力を表現したか

殆どCGになった分、長まわしに関しては簡単になったのかと思ったら、全くの正反対でした。そもそもリアルな無重力を表現するために4年半の歳月をかけて新たなテクノロジーを開発したとか。
はじめは『アポロ13』のようにNASAの急降下飛行機(愛称、嘔吐彗星w)による擬似的無重力空間での撮影になる予定だったらしいんですが、長まわしを考えると難しいのもあり、結局新技術を採用するに至ったようです。
ちなみにサンドラ・ブロックは飛行機が苦手らしく、急降下撮影と言われたとき相当の覚悟をしたとのこと。結局、飛行機撮影はなくなったけれど、それ同等のハードルの高い演技が要求されることに。
その新技術による撮影ですが、まずは無重力空間での運動をシミュレーションするシステムそのものを開発するところから始まり、次にそのシステムで作られたCG空間にそって俳優達が演技をしていったそうです。主演2人は、複数のワイヤーにつられた状態で無重力風のスローな演技をしたり、宇宙空間の光を再現するためのLED照明に囲まれた四角形の箱「ライトボックス」に入って操り人形状態で演技したりと、かなり大変だったようで。最初から最後まで全てが完全に計算され、何もかもが決められた状態で、よくこんなに自然な演技ができるなぁと・・・主演2人は本当にすごい。

うわさのライトボックス
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アルフォンソ・キュアロン監督は、撮影方法模索中にジェームズ・キャメロンデヴィッド・フィンチャーのような映画監督にも相談にいったらしいです。しかし返ってきた言葉は「テクノロジーが開発されるまで待て」とのこと。そして4年半待ったと笑


メイキング映像。後半ネタバレしているので未見の方は観ないほうがいいです。



長まわしってどうなのか

長まわしの効果として、作りもの感が薄れ、観ている人がまるで現実で起きていると感じるというものがあるそうです。ドキュメンタリータッチになるし、確かにそういう風に見える気はします。
面白いことに、映画にはショットとショットをつなぐ「モンタージュ」という技法があります。技法というかもう今では映画の編集そのものと言ってもいい基礎的な技術なのですが、ようは「カットして、つなぐ」ことが映画の基本なんです。異なる複数のショットを組み合わせ、意味を持たせることによって、映像でストーリーを語っていくことができるのです。(例:お母さんの心配そうな顔のアップの後に、赤ちゃんの映像を挿入することで「母親」が「赤ちゃん」を心配しているという映像に仕立て上げる、みたいな。『羊たちの沈黙』ではこのモンタージュを利用してうまいことミスリードしてました)

こういうことを考えると、いわば長まわしは、映画が映画であることに抵抗しているような表現方法なのかなあと思ったりもします。映画創世記時代の、まだ編集という概念がなかった頃の映像を再現しているみたいな。考えすぎか。

トゥモロー・ワールドの思い出

トゥモロー・ワールド』と『ゼロ・グラビティ』の内容に触れているので、未見の方はご注意ください。
トゥモロー・ワールド』は学生時代に映画館で観たのですが、これがすごい衝撃的な作品でした。
まず、臨場感たっぷりのドキュメンタリータッチの映像、そして『ゼロ・グラビティ』同様、度肝を抜く長まわしの場面の数々。
クライヴ・オーウェン達が車の中で、お口でピンポン球をキャッチボールして戯れていると、いきなり襲われカーアクションに突入しジュリアン・ムーアが死んでしまうという場面があるのですが、この場面が凄すぎて凄すぎて。
えー!このシーン、ワンカットじゃない?!え、なんかみんなすごいアクロバティックなことしてるけど?!え、てかジュリアン・ムーアもう死ぬの?!
ビックリでした。『エグゼクティブ・デシジョン』のスティーヴン・セガールもビックリです。
ジュリアン・ムーアが出ていると知って劇場に観にいった映画でもあったので、その衝撃といったら。死ぬなよ!って感じでした。今回の『ゼロ・グラビティ』でも、え、ジョージ死ぬの?もう死ぬの?!状態でしたね。

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そしてここからは完全に余談というか私の思い出話なんですが・・・
トゥモロー・ワールド』鑑賞後、大変満足した私は、ずーっと連絡を取っていなかった映画好きの女性に久しぶりに連絡を取ったんです。


トゥモロー・ワールド』超良かった!あまりにも良すぎて誰かに伝えたかった!


そんな旨の連絡です。
その人はネット上で知り合った方で、一度もお会いしたことが無かったんですが、その日からまた連絡を取り合うようになりました。あれからもう7年。
今年、その人と結婚することになりました(笑)
いやあ、本当にありがとうアルフォンソ・キュアロン監督。あなたのお陰で私は家庭が築けます。これからも応援します。


ちなみに、つい最近気付いたんですが『ゼロ・グラビティ』の撮影監督エマニュエル・ルベツキは、『トゥモロー・ワールド』『トゥ・ザ・ワンダー』でも撮影を担当していた方でした。全部好きな映画でビックリ。私はルベツキ先生の映像が好きなようです。これからも要チェック!!




スタッフ&キャスト

監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン,ホナス・キュアロン
製作:アルフォンソ・キュアロン,デビッド・ハイマン
製作総指揮:クリス・デファリア,ニッキ・ペニー,スティーブン・ジョーンズ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
美術:アンディ・ニコルソン
編集:アルフォンソ・キュアロン,マーク・サンガー
衣装:ジャイニー・ティーマイム
音楽:スティーブン・プライス
キャスト:サンドラ・ブロック,ジョージ・クルーニー,エド・ハリス