【レビュー】ゼロ・グラビティ(原題:GRAVITY) その壱

DON'T LET GO

初めてこの映画の予告編を観たとき、これは絶対に劇場で観る!と興奮した記憶があります。
結果、3度も映画館に行きました。同じ映画をこんなに劇場で観たのは人生初です。




映画ファンはほぼ確実に観にいくと思うのですが、まだ観ていない人は是非劇場へ足を運んで欲しいです。
間違いなく映画史に残る傑作です。
映画館で観てこそ真価が発揮される作品なので、観れるうちに映画館で観ておいた方がいいです。
できれば設備の整った最高の映画館で、もちろん3Dで!
上映時間は約90分です。もし相性が悪くても耐えられる時間です。3Dのため、お値段がちょっと高くなりますが(笑)
かなり思い切った内容なので誰にでも受け入れられる作品では無いけれど、こういう映画もあるんだという映画体験として楽しめればと思います。



軽くレビューを書くつもりが語りたいことが盛りだくさん過ぎて、記事にするまで時間がかかってしまいました。
で、あまりにも長くなりそうなんで、記事分けますw
(次の記事はこちら。


まずは映画自体のストーリーについて色々書いていきます。※ネタバレごめんです。


映像だけじゃない

脅威の長まわしと迫力のカメラワーク。テクノロジーを駆使した革新的無重力空間の表現。
そんな映像技術ばかりが注目される本作ですが、そもそもこんなシンプルな内容でよくも一本の映画がつくれたなと、そこにビックリしました。(そういう意味ではダニー・ボイル監督の『127時間』もヤバイですが)


物語は、宇宙空間に放り出された宇宙飛行士が宇宙で如何にかして生き延びようとするお話。そう、宇宙の話。
この映画、ぶっちゃけ似たようなアクションの連続なんですよね。
物にぶつかっては吹っ飛ばされ、デブリに巻き込まれては吹っ飛ばされ、またいろいろあっては吹っ飛ばされ。
吹っ飛ばされ活劇です。下手したら途中で飽きます。
映像もずっと宇宙空間 or 無機質なステーションの中。なのに全く飽きない。


それはものすごくシンプルで、本質的で、普遍的なテーマを軸に描いているからだと思うんです。

2人の宇宙飛行士

登場人物は少なく、感情移入の対象は女性宇宙飛行士ライアン・ストーン(サンドラ・ブロック)ただ一人。
それを助ける神のようなイケメソがマット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)。
主要キャストはこれだけ。(ちなみにエド・ハリスが声だけ出演してます。『アポロ13』もう一度観たい)
語られる言葉も多くなく、人物の背景を探りさぐり観ることになります。


ライアンは、ただでさえ孤独に生きてきました。
愛すべき娘はあっけない死に方をし、その後の人生は灰色の日々。
彼女は宇宙で究極の孤独と絶望を味わいます。


対してマットは人生を楽しんでいるベテラン宇宙飛行士。
どんな状況でも悲嘆することなく、ユーモアを絶やさず、冷静にベストを尽くす。イケメンの中のイケメンです。
劇中、彼はまるで当たり前のように、究極の自己犠牲、というよりも極限状態での冷静な判断を行います。

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絶体絶命のピンチ、ライアンを救うため自ら命綱をはずすマット。
彼は宇宙の彼方へ去りゆきながらもライアンを励まします。


「諦めることも学べ」


ジョージの安心感は仏の如く。
お亡くなりになった後もマットの存在はライアンを救うことになります。


「あなたをつかんでいたのに・・・」

ライアンの決断

物語の終盤、ライアンが乗り込んだポッドは燃料切れで全く動かない。
SOSも届かず、通信できた相手は地球上のどこの国かもわからない男性アニンガ。
ライアンの「生きたい」という気持ちは急速に萎んでいきます。
通信機から聞こえるのは、子供の声、犬の鳴き声、アニンガの子守唄。
安らかな気持ちになったライアンは、ポッドの酸素を抜き、ついに死のうとします。
(このときライアンの涙が宙に浮かぶシーンは『ファイナルファンタジーⅧ』のリノアとスコールが宇宙で再会する場面を思い出すね!)
ここで結末をむかえる映画もあるでしょう。しかし物語は意外な展開をみせます。


「奇想天外な話なんだよ」


死んだはずのマットが戻ってきます。


「必ず何か方法がある」


マットは「死ぬな」とは言いません。
「ここは居心地がいい、安全だ、しかし戻るのであれば自分の人生を生きろ」


生きることは辛いです。死ぬほうが楽です。
ライアンは、ここでがんばって生還しても、また娘のいない単調な毎日を過ごすだけなのではないか・・・


森博嗣の小説の中に「死を恐れる人はいない、皆、死に至る生を恐れている」というような文章があったのを覚えています。
そう、苦しんで死ぬくらいなら、徐々に意識が遠のいて、眠るように死にたい。
ライアンは死を選ぶことで生きることから逃げようとします。


しかし仏のマットと再会したライアンはもう一度「生きたい」と思います。
今できることのベストを尽くす。それでも無理ならしょうがない、ただ、彼女の死に場所はここじゃない。
逃げるために死ぬのではなく、死に立ち向かうのです!
(てかこのポッドのシーンも殆どワンテイクです。もう神業です。奇跡です)


ここからは激熱の展開です。
生きていることの尊さ、生き抜くことのすばらしさ、人生は最高の旅だ!(高橋歩みたいですね)


この映画は、沈むライアン⇒元気付けるマット⇒元気になるライアン!というライアンの心情がそのまま物語りになっています。
なのでアクションや映像に大きな変化が無くても、興奮し、胸が熱くなり、強く惹きつけられるんです。
宇宙空間を漂うライアンが、後半は本当にたくましく、かっこいいです。
そして音楽もめちゃくちゃ効果的。テッパンの盛り上げ方をベタだけどすんげえカッコよくやっちゃってます。


ラスト、燃えながら地球に落下するポッドが美しい。
こんなに美しく見える映像は久しぶりでした。
海に落ちてからも溺れそうになりながら必死に陸に上がろうとするライアン。
今度は重力が彼女の行く手を阻む。だけど諦めない。
泥にまみれながら上陸するライアン。立ち上がれず笑うライアン。


「Thank you」


再度立ち上がり、歩み始めるライアン。
彼女の人生はこれからダゼ!


『 G R A V I T Y 』!!!
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ふう。
単純なストーリーゆえ、ある種の様式美さえ感じさせる映画でしたね。
色々勝手に解釈、考察していて分かったけれど、この作品の裏返しのような映画が『ミスト』ですね。監督はフランク・ダラボン、原作はスティーヴン・キングです。
これも良い映画なので観てない方は是非ご鑑賞ください。


で、すごく良かったんだけど、つっこみたいところひとつ

ライアンが命からがら国際宇宙ステーションに到着し、宇宙服を脱ぐ場面。
BGMが安らぎムードになり、目を閉じたライアンはゆっくりと身体を丸める・・・。
これは・・・まさか、胎児?!
いやいやそんな胎児ポーズとってる暇ないやろ!マット助けに行かな!
ここがただぐったりしてる場面なら何とも思わなかったのですが、あまりにも露骨に胎児やってたのでちょっと覚めちゃいました。
そういう隠喩はもっとナチュラルにやって!今それどころじゃないでしょ!一刻を争う緊急事態でしょ!ってw
ご丁寧にチューブでへその緒まで表現してあって、まあこういうネタとして楽しめるので良いんですが。
この作品がライアンの成長と、再生の物語であることが非常に分かりやすく理解できるシーンではありましたね。

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まだまだ語りたいことがあるのですが次回にします。
つかれた、つかれた、つかれた。寝よう。


つづき↓
【レビュー】ゼロ・グラビティ(原題:GRAVITY) その弐 またはこの映画は如何にして心配するのを止めて無重力を愛するようになったか - 雑食シネマライフ


スタッフ&キャスト

監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン,ホナス・キュアロン
製作:アルフォンソ・キュアロン,デビッド・ハイマン
製作総指揮:クリス・デファリア,ニッキ・ペニー,スティーブン・ジョーンズ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
美術:アンディ・ニコルソン
編集:アルフォンソ・キュアロン,マーク・サンガー
衣装:ジャイニー・ティーマイム
音楽:スティーブン・プライス
キャスト:サンドラ・ブロック,ジョージ・クルーニー,エド・ハリス