雑食シネマライフ

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【レビュー】トゥモローランド(原題:Tomorrowland)予告編のウソ?本編に刻まれた映画史

ウォルト・ディズニーが遺した、≪最大の謎にして最高のプロジェクト≫

予告編を観ずに映画館へ足を運んだのですが、率直な感想としては、面白かったです!久しぶりに映画らしい映画を観た気がしてかなり楽しめました。

ただ、この予告を観た方は悪い意味で「騙された」と思ったみたい。確かに…これは…。
ワールド・ウォー・Z』のときも思ったけれど「ネタバレ」とは関係ない部分をミスリードする予告編は、本当に観たいと思っている人を遠ざけてしまうだけだと思う。

まず予告編のウソをとりあえず暴いておくと…


 


予告編のウソ

ウォルト・ディズニー」は物語に一切絡んでこないです。ディズニーランドも出てきません。
「ディズニーランド」の中にある「トゥモローランド」で冒険する話ではありません。
普通にSFです!ディズニーファンの方、だまされないで!SFファンの方、こっち来て!
でも騙されることによってこれまで食指の動かなかったジャンルにチャレンジするきっかけが生まれるかも?!
(調べてみるとニューヨーク万国博覧会イッツ・ア・スモールワールドが初めて稼働したらしい。そこからアナハイムのディズニーランドに移設されたとのこと。ニューヨークからアナハイムってまた大移動だなあ。)
あと純粋に映画ファンも楽しめる映画になっています。


映画史を振り返りながら観る

※以下ネタバレ含みます。すぐネタバレします。

興味を持続させる話運びがうまいです。後から振り返ると、いい意味で都合の悪い部分は隠してます。鑑賞者が意識しないよう巧みに誘導される感じ。
そしてテーマは、アンチ・ディストピア。ところどころ懐かしさを感じさせるモチーフが多く、素敵なレトロフューチャー感。

ディストピアと言えば劇中でも出てきた「1984」「華氏451」がパッと思いつきますが、他にも「ブレードランナー」「未来世紀ブラジル」「マトリックス」「ターミネーター」(「嗤う分身」もそういえばそうだ)と数え上げればきりがないほど多くの作品があり、大衆に好まれてきました。
テクノロジーの脅威と、ある種の可能性を感じさせる未来、ハードボイルドな語り口が陰鬱ながらも魅力的な雰囲気を醸し出すディストピア
しかし今作はこれらディストピア作品にたいする直接的な反抗を挑んでいるところに清々しさを感じます。
インターステラーを観たときにも思ったのですが、最近のSFはテクノロジーを肯定的に描き希望を感じさせるものが多いなって、流行なのかなーと思ったり。

エッフェル塔エジソン(動画をつくった人)とクルーニーのセリフ「お楽しみはこれからだ」(映画史上初めて声が出るセリフ)は映画史をなぞったものだと思うのですが、これは

「あのころは夢があってよかった、テクノロジーの進歩によって映画はより夢のあるものになった筈なのに、なんで暗い未来ばかり描いてるんだよ!」

みたいなノスタルジックな想いを伝えたかったのかも?(無駄にロケットで飛んでいくのはメリエスの「月世界旅行」?)
夢工場と揶揄された50年代のハリウッド映画。
ベトナム戦争という社会背景の中、破滅的結末を描くことが多くなったアメリカン・ニューシネマ時代。
未来にもう夢はないのか…アンチ・ユートピアSF映画が一気に増える80年代以降。
まわりまわって、今度はアンチ・ディストピア!いい加減悪い夢から覚めましょうとこの映画は訴えます。
夢を見過ぎるのも、悲観的になりすぎるのも良くないよ!みたいなね。
ただ「あきらめずに夢を抱こう」と言うのではなく「悲観的な自分に酔うな」と伝えるところが面白いです。

ラスト、ドヤ顔で演説するフランク(ジョージ・クルーニー)が新興宗教の教祖みたいで、ちょっと引きましたが、やる気の出る自己啓発書を読んだかのようなポジティブな後味になれる作品でした。
あとはディズニーランドのスペース・マウンテンが出てきてちょっと嬉しかったり。
ギークな理系女子(だけど活発で明るい!)ケイシー(ブリット・ロバートソン)にはSF好き男子は萌えるよなあと思ったり。(エッフェル塔で「ヒューマン!」と叫ぶ場面は本当にかわいい)
スター・ウォーズネタが出てくるあたり、ディズニーのキラーコンテンツの多さ、もう誰も勝てないよ、と思ったり。
とりあえず謎のアンドロイド少女という時点(と言うかあの子のビジュアル)で観たくなった作品でもあるので、そういう意味でも結構満足出来ました。
あ、あの転送装置の内観?が『シュタインズ・ゲート』のタイムマシンにちょっと似てる気がした…。

夢を見させる監督とSF作品を多く手がけているスタッフ。

ブラッド・バード監督、何の監督だっけなあと思って調べてみると『Mr.インクレディブル』や『レミーのおいしいレストラン』の監督!そして『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』の監督かあ。
一貫して夢のある作品をとっているなあという印象。M.Iシリーズで最も明るくて、最も普通に楽しめる作品な気がするゴースト・プロトコルを作った人なんですね。
(『アイアン・ジャイアント』『ニューヨーク東8番街の奇跡』は未見なのでなんとも言えないけれど評判いいですよね。)

脚本はブラッド・バードとデイモン・リンデロフという方の共同脚本。デイモン氏は、TVシリーズの『LOST』や『プロメテウス』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』等に携わった方。エンタメSFを書き慣れてる人なんでしょうね。個人的にスタートレックシリーズのシナリオはちょっと残念だったので、今回の『トゥモローランド』はこの方が関わった作品の中じゃ一番素直に楽しめたかもしれない。(プロメテウス、あれはあれで好きなんですけんどね…)
謎をたくさん散りばめて、さてどう畳むつもりだ?と思ったらあっさり終わる作品が多い印象。『トゥモローランド』も似たようなあっさり感(特に悪役の始末の付け方)はあるのですが…
(一般的に脚本にはたくさんの人が関わり、リライトも多いと聞くので、脚本家の作家性は出にくいと思っています。どちらかと言うと、監督のブラッド・バードの意志が今作は強そう)

撮影は『オブリビオン』『トロン・レガシー』等、こちらもSF!な作品に携わっている感のあるクラウディオ・ミランダという方。
美術はスコット・チャンブリスという方で、『カウボーイ&エイリアン』『スター・トレック』に携わっているよう。デイモン・リンデロフと組むことが多いというかきっと感性が合うんでしょうね。

キャストはこんな感じ。

主人公フランク役はジョージ・クルーニー。彼はディズニー作品に出るのは初めてとのこと。相変わらずの渋いイケメン。SF作品ということでゼロ・グラビティを思い出す。
ケイシー役のブリット・ロバートソン。元気で可愛いなあ。あまり映画にはまだ出てないよう。TVドラマのアンダー・ザ・ドームに主要キャストで出演。観てみようかな。
アテナ役のラフィー・キャシディ。この子はすごく不思議な雰囲気の子でしたね。今後が気になるところ。
ケイシーの弟役、ピアース・ガニォン。彼!この子役が個人的には最高のびっくり!『ルーパー』で半端ない顔芸を見せたあの子です!めっちゃちっちゃいのに、めっちゃ存在感ある印象的な演技をする彼!今回も出番は少ないながらその才能をいかんなく発揮しているので是非!というか『ルーバー』を観てない方は是非観てほしい!!この子の今後も気になる。
フランクの子供時代を演じた、トーマス・ロビンソン。彼は正直いまいちでした。なんというか、物語の冒頭でこの子が出てきた瞬間、なんというかコテコテなディズニーSF作品な雰囲気が一気に出てきて、ちょっとゲンナリ。気に入っている方には申し訳ない。

トリビア

冒頭に登場する麦畑は撮影のためにつくったもの。ブラッド・バードが「麦畑をつくろう!」と言って、あの土地を所有する農家に小麦を育ててもらったらしい。



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