雑食シネマライフ

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【レビュー】『ビフォア・サンセット』(原題:Before Sunset) リアルタイムな人生の軌跡…その②

『ビフォア・サンライズ』の続編。前作から9年後の大人な恋愛物語。
作中の設定同様、実際に現実の世界で9年の歳月を経て撮った映画です。

脚本は主演の二人と監督の共同脚本。
つまりこの映画、脚本を書いた3人の9年間の経験、成長がそのまま物語に活かされています。
イーサン・ホークなんて、映画で語ってる内容は殆ど本音なんじゃないかと思うくらい…。

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(前作、ビフォア・サンライズのレビューはこちらです


以下、ストーリーをなぞりつつレビューを書いていきます。ネタバレあります。
劇中の台詞をいくつか記載していますが、ぶっちゃけうろ覚えだったり、ググって持ってきた内容なので、正確性は欠きます。
諸々お気をつけください。



恋の再熱を描いた夕暮れ時

昔、ウィーンで別れたふたり。
半年後に会おう、その約束は守られたのか。


ジェシーは作家になっていた。
セリーヌとの、あの夜の出来事を小説に書き、今はその本のツアー中。
黄昏に染まるパリの書店でインタビューを受けている。

インタビュアー:この本の中の女性は実在するんですか?
ジェシーさあねえ、でもここはパリだ、イエスと言っておこう。


ジェシーの額には深いシワが刻まれている。
ああ、ジェシー(イーサン・ホーク)も大人になったんだなぁと。


インタビュアー:このあと2人は再会できたのですか?
ジェシーさあねえ、ここは祖父の言葉を借りよう、それを口にしたらすべておじゃんだ。


質問の答えは映画を観ている僕らも気になっているところ。
そう、それを語ったらすべてがおじゃんになりかねない。
しかしこの映画は作られた。前作と同じ監督、同じキャストで。そんなハイリスクな物語がいま幕を開ける…。

9年前の約束

ジェシーはインタビューを受けながら、視界の隅にセリーヌを見つけた。
書店の片隅にたたずむセリーヌ
あまりにも当たり前のようにそこに居るセリーヌ
再会できていたのか?今はもういつも側にいるような関係なのか?
いや、違う、ジェシーの表情は、驚きと焦りでいてもたってもいられない様子。
ジェシーの本を読んだセリーヌは彼に会うためこの書店に来ていた。


やはり、約束は果たされていなかった。



9年ぶりの再会。ちょっぴりぎこちない二人。でもすぐに当時の雰囲気を取り戻す。
ジェシーの滞在は今回も制限時間付き。しかもたったの1.5h。
彼は日没前にパリを去りアメリカへ帰る。


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セリーヌは9年前の約束の日、ウィーンに行くことができなかった。理由は祖母の死。まさにどうしようもない理由。


セリーヌ:あなたは行ったの?あ、行かなかったの?よかったぁ、あなただけ行っていたとしたらそれこそ悲劇だもの、あれ?でもどうして行かなかったのよ?よっぽどの理由よね?え…もしかして、行ったの?!えー!いったのー?!!

てな具合で、約束の日、ジェシーは遠路はるばるアメリカから訪欧。セリーヌに会うことはできず生きた屍のようにヨーロッパを徘徊していた。残念。
そういえばビフォア・サンライズジェシーがヨーロッパにいた理由も当時付き合っていた女性に会うためだった。
しかしその彼女と別れたもんだから暇つぶしにヨーロッパ一人旅。電車で出会ったセリーヌと一夜を過ごした。
この男…半年の内に二度も地球の裏側にいる女に会いに行ってしかも失恋しているなんて、悲惨すぎる。


『ビフォア・サンライズ』の元となったリチャード・リンクレイター監督の実際の恋愛では、連絡先を交換して遠恋を続けていたものの、結局自然消滅。
この経験から「ジェシーセリーヌは半年後の再会を果たせなかった」という設定につながったらしい。
でもさ、ビフォア・サンライズをつくった当初は、自分と同じ轍を踏まないようにと約束だけを交わしてジェシーセリーヌを別れさせたんじゃないかな?連絡先を交換していたら結局長くは続かないと、そんな風に考えたんじゃなかろうかと。
リンクレイター監督の恋愛では、自作の映画を通じた再会は叶わなかったけれど、ビフォア・サンセットジェシーは、想いを込めて書いた小説で、見事セリーヌとの再会を果たした。
虚構と現実との、切ない相違。


2人の9年間

パリの街を歩きながら、初めは冷静な二人も、この9年間の互いの状況を知るうちに、恋慕は膨れ上がって行く。
2人はこの9年の間、実は同じ時期にNYに住んでいた。ニアピンすぎて、連絡先を交換することの大切さを痛感する。

これは『運命じゃない人』の心に響くあの一言を思い出す。(俺だけだろうけど)
「いいかお前、電話番号をナメんなよ?あの11ケタの数字を知ってるか知ってないかだけが、赤の他人とそうじゃない人をわけてるんだ」


ジェシーは結婚して子供がいた。しかし幸せな結婚生活は送れていない。


ジェシー:僕らは道を外れないようにと、夫婦関係を維持している。しかし妻を愛していない。


これは一作目でジェシーが離婚した両親について語っていたことと酷似している。


9年前のジェシー:うちの親なんか、愛し合っていなかった。でも結婚し、僕を産み、努力しようとした。


イーサン・ホークは『ガタカ』で競演したユマ・サーマンと1998年に結婚。
そしてこの『ビフォア・サンセット』の直後、2004年に離婚。
リンクレイター監督は『テープ』で当時夫婦だった彼らと共に仕事をしている。
そんなこんなで、この映画の中でジェシーが語っている愚痴がユマに対するものなのかと考えてしまった人がいるようで、離婚の理由はこの映画なんじゃないかと疑われ、ジュリー・デルピーも質問攻めにあったらしい。
創作活動は様々なものを犠牲にして、しかしそういった領域に踏み込むことで、真に迫った作品が生まれるんだなあと。おそろしい。


一方、セリーヌジェシーとの一夜のあと、様々な男の人と付き合ったものの、未婚のまま。
環境保護活動家になり、どうやらあまり幸せな恋愛はできていないよう。

互いの近況を知り、暫くは気持ちを抑えていた二人だけれど、結局は想いをぶちまける。まるで責めあうみたいに。


ジェシーなんだよ、なんでこなかったんだよ!もし君のおばあさんがもうちょっと早く死んでたら(おいおい)
セリーヌあの夜、私の恋愛感情のすべてがあなたに持ち去られてしまったの、あなたのせいで私は恋愛ができん!


セリーヌの台詞は、まるで『ルパン三世 カリオストロの城』の銭形警部がクラリス王女に言うあの言葉のよう。


銭形:いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です!


確かにとんでもないものだなぁ。と、9年後のセリーヌを見るとルパンの罪深さがわかるわけです。


もうひとつの物語

同じ時間軸の延長線上に存在しているものなのか、パラレルな作品なのか、特に意味は無いのか、ジェシーセリーヌが登場する映画が『ビフォア・サンセット』までの間にもうひとつある。

『ウェイキング・ライフ』
ジュリー・デルピーイーサン・ホークリチャード・リンクレイターの3人が初めて共同で脚本を書いた僅か数分間の場面で、ジェシーセリーヌが登場する。

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『ビフォア・サンライズ』での再会の約束を果たした二人が恋人としてうまくやっている、みたいなシーン。なんだけど、その後の『ビフォア・サンセット』で実は半年後の再会が出来なかったことを知ると、この『ウェイキング・ライフ』の一場面は、2人のどちらかが見ている夢なのではないか?胡蝶の夢のような。想いが強すぎて、忘れることができなくて、もしあの時再会ができていたら、過ごせたかもしれないひとときを思い描いているのかも。なんて。

この『ウェイキング・ライフ』での3人の共同作業が楽しかったそうで、そこからこのビフォアシリーズの共同脚本に繋がったらしい。

ワルツを歌わせて

映画のラスト、ジェシーセリーヌの自宅に行く。
ジェシーにせがまれセリーヌは自作の歌を唄う。
ジュリー・デルピーの弾き語り。この歌が・・・超いい。声とギターの響きが心地いい。
歌詞の中には男の名前が織り込まれている。


"ワルツを歌わせて 一夜限りの恋のワルツを
あなたにとっては一夜限りのこと
でも私には違う 本当よ
あなたとの あの一夜は ジェシー"


ジェシーはそんな想いが詰まった歌を聴いて、セリーヌに一言。


ジェシー:名前の部分は相手によって変えるのかい?笑

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( どや )


これまた『ビフォア・サンライズ』でも似た場面があった。宿無し詩人の即興詩。詩人は二人に声をかけた。


詩人:ことばをひとつ選んでくれ、詩を書くよ、さぁ早く、ミルクセーキ?いいよ、ちょっと待っていてくれ、できた…


そして詩人は感動的な詩を朗読する。ふたりはチップを渡し、詩人と別れた後、ジェシーセリーヌに言う。


9年前のジェシー:あらかじめ作っておいた詩に言葉をはめ込んだだけじゃないか?



ジェシーへの愛の唄の後、セリーヌニーナ・シモンという歌手の真似をしながら、
なおもソファでくつろぐジェシーに言う。


セリーヌベイビー、飛行機に乗り損ねるわよ
ジェシー分かってるよ(微笑)


そしてエンドクレジット。
初めて観たときは面食らった。え、終わり?!みたいな。
でも、この最後の2人のやりとりがお洒落すぎて、おとなな恋愛映画って感じで、すんごい印象に残っていた。
ジェシーが帰る気無い感じが笑。

今観ると、ちょっとジェシー羽目外しすぎでしょー、奥さん泣いてしまうよー、なんて、不在の嫁を気遣ってしまいました。


さて、この映画の結末はまたもや分からない。
きっと、脚本を書いた彼らも、わからなかったんだろうなあと。
そもそも人の人生も死ぬまでわからない。幸せの絶頂が永遠に続くわけじゃないし。
「めでたしめでたし」は、あり得ない。

あれから9年。ついに『ビフォア・ミッドナイト』ができました!
タイトルどうするんだろうと思ったら、もう太陽関係なかった!

ビフォア・ミッドナイト』もめっちゃ良かったので、レビューは必ず書きます!
しかしいつになるかは・・・わかりません笑

ではまた。