雑食シネマライフ

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【レビュー】ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)(原題: Before Sunrise) リアルタイムな人生の軌跡…その①

一番好きな映画って何?

映画が好きな人にとってこの質問は本当に厄介。
だって映画は、観たそのときのコンディション、自分の置かれている状況、観た場所によって印象をころころ変えるものだから。

それは作り手にとっても同じなのかもと思わせてくれる、とってもおもしろい映画がこの作品。
リチャード・リンクレイター監督、イーサン・ホークジュリー・デルピー主演の恋愛映画『ビフォア~』シリーズ。



まずはその一作目『ビフォア・サンライズ』(日本公開時のタイトルは『恋人までの距離(ディスタンス)』)をご紹介。

恋の始まりを描いた夜明け前

旅するアメリカ青年ジェシー(イーサン・ホーク)とフランス人女子大生セリーヌ(ジュリー・デルピー)。彼らは同じ長距離列車にたまたま居合わせていた2人。そう、彼らはまだ赤の他人。


物語はジェシーが読書中のセリーヌに声を掛けたところから始まる。


「何を読んでるの?」

(バタイユ・・・)


イケメンジェシーは彼女を食堂車へ導き、ちょっと知的な会話とスピリチュアルな体験談で盛り上げる。意気投合するふたり。
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楽しい時間はあっという間。気付けば列車はウィーンに到着。彼は明日の朝、ウィーン発の飛行機でアメリカへ帰るらしい。つまりここでお別れ。
しかしセリーヌともっと話したいジェシー、さあどうする。


「お金ないからホテル泊まらないで夜通しウィーンの街を歩こうと思うんだけど、一緒にこない?★」


さすがイケメン!こんな言葉にのって、ほいほいついていった美女は十中八九殺される気がするんだけど、この映画はそういう映画じゃない。恋愛青春映画です!
彼は更に印象的なセリフを口にして、彼女を口説き落とす。


こう考えたらどうだろう、これから10年,20年後、君は結婚している。でも出会った頃の情熱は冷め、毎日喧嘩して夫を責め立てる。そして思うんだ、もしも今までに出会った誰かと、例えば、あの列車で出会ったアメリカ人、彼と一緒に列車を降りていたらどうなったんだろう?それをタイムマシンに乗って、いま、体験しているんだ。さ!ウィーンいこーぜ!!!(うろ覚えなので正確性は欠きます)


こんな口説き文句がすぐ出て来るなんて、ナンパ慣れしてるとしか思えないぞこのチャラ男。セリーヌジェシーの誘いを快く受け入れ、ウィーンの街へ飛び出します。

2人は道行く人々と、ひとときの出会いを楽しみながら、ウィーンの街を徘徊していきます。
舞台役者や手相占い師、宿無し詩人にバーのマスター。
レコード店の狭い視聴室で緊張しながらじっと音楽を聴くふたり。
チャラ男だと思ったら意外と肝心なところで躊躇ってしまう初々しいジェシー
観覧車という絶好のシチュエーションにおいても、じっとしているジェシーセリーヌの方からキスしにいったり。
電話ごっこでお互いの気持ちを打ち明けあったり。
ちょっと言い争ったと思ったら「いまのはケンカかな?」「これがケンカなら、ケンカは楽しいわね、ウフ」
なんて感じで、もーね、もーね、いいね。
そんなこんなで他人同士だった2人の距離は少しずつ近づき、より親密な関係になっていきます。まさに恋人までのディスタンス!

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若さ溢れる2人の会話

この映画が楽しいのは2人のいちゃいちゃだけでなく、ウィットに富んだ会話が物語の中心にあるところ。2人は絶え間無く喋り続けます。お互いのことを知ろうと、自分のことを良く見せようと、一晩だけの付き合いにも関わらず、その想いをどんどん膨らませるかのように。

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で、とても楽しい対話劇なのですが、インテリフランス女子大生と、ヨーロッパ一人旅しちゃうアメリカ人青年という設定なので、会話がなんとなくアカデミックで哲学的なのです。
これがねー、学生時代に観たときはかっこいい!とか思ってたんだけど、今観ると、なんか衒学趣味的でダサく感じるんだよね。合コンとかで空気読めない男がいきなり明治維新について熱く語り出す、みたいな(違うか)。
でも、恋愛に対するピュアな感情や、それに反してなんだかドライに男と女を語るところや、物事をやたら哲学的に考えてしまうところは自分にも身に覚えがある懐かしい感覚なので、嫌じゃないむしろやっぱり大好き。久々に観ると、気に入ったセリフや印象に残っていたセリフが沢山あることに気づきました。


はじめて観たのは20歳頃で、当時はこの映画と『スパニッシュ・アパートメント』にやたら影響を受けた。ネットで知り合った人たちに会いに行くため、青春18切符で日本縦断一人旅やっちゃったりね。海外には行く勇気と金がなかった笑。
人生で最も重要な事は人との出会いだ!と、そんな風に思っていました。

若さゆえ、守るものが無いゆえ、無限の可能性を感じていたアノ頃。
時が経つにつれ、映画の印象はこうも変わるものなのかと。
とはいえ私もまだ20代アラサーですけどね笑

セリーヌのモデルとなった女性

1989年の秋。
リチャード・リンクレイター監督が29歳の頃、彼はフィラデルフィアの玩具店で20歳くらいの女性、Amy Lehrhauptと出会った。彼らは映画の中のジェシーセリーヌのように、夜通し歩き回り、語り合い、キスをした…。連絡先を交換した彼らは、その後、電話などで遠距離恋愛を続けた。しかし自然消滅。それから、リンクレイターは彼女との出会いを映画にすることにした。なぜなら彼は、彼女と過ごした夜の間に「このことを映画にする」と彼女に告げていたから。
彼女も見てくれるだろうか?リンクレイターは上映会にその女性が来ることを考えていた。しかし彼女は来ることはなかった。


月日は経ち、続編の『ビフォア・サンセット』も公開された後、リンクレイターの元に一通の手紙が届く。
あの女性の友人からだった。そこに書かれていた内容は…彼女は、あの夜を共に過ごした女性は『ビフォア・サンライズ』の撮影数日前に、バイク事故で亡くなっていた。
映画史に残る(これは絶対残る)シリーズのモデルとなった女性…最新作の『ビフォア・ミッドナイト』は彼女に捧げられているとのこと。クレジットを見ると、彼女の名前があります。

近づく別れ

結末に触れています。
(話を映画本編に戻します)

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一夜限りのデート。夜明けにジェシーはアメリカへ帰る。余計な約束事は無し、今夜をめいっぱい楽しも。そんなルールで本心を誤魔化していた彼らも別れという現実を前にして、想いを爆発させる。



半年後にここでもう一度会おう!連絡先は知らなくていい、そんなものはいらない!またね!!



そして2人がいなくなったウィーンの町並みをカメラがとらえ、映画は幕を閉じる。


ロマンチックなピュアラブ青春映画でした。
多くの映画がそうであるように『小さな恋のメロディ』や『卒業』がそうであるように、その後ふたりがどうなったのか?
それは観客の皆様の心の内だけにある…後は語らぬが華…とはならないのがこの映画のすごいところ。


こういうドラマに続編いる?蛇足じゃね?そう思いますか?違うんです。このシリーズは違うんです。きちんとその後の「現実」を描いていく、超おもしろい恋愛ドラマなんです!

続編に関してはまた次回。さよならさよならさよなら。


ビフォア・サンセットのレビューはこちら。

初見時のミニレビューはこちら。