【レビュー】エンダーのゲーム(原題:Ender's Game)

禁断のサードの少年。

名作SF小説の映画化ということでSF好きの自分としては観ておきたい。
しかし原作未読。さあどうする!

「映画は映画だから原作知らんでも、むしろ知らん方が楽しめるやろ」

なんて思ったので原作スルーで観にいきました。(ちょい昔までは原作読んでからじゃないと観に行けないシンドロームでしたが)
正直、予告観た段階ではまーったく興味無かったんですけどね。
なんだか気分が乗ったのでついつい鑑賞。

で、感想ですが。



うん、やっぱ原作が面白いんだろうね、予想以上に楽しめた!
主人公エンダーのキャラが魅力的で、人間ドラマも良かったし。
ただ2時間弱に、このスケールの物語を収めるのはさすがに無理があったなあーと。
読んで無くても思ってしまう。原作のダイジェスト感否めない。
感情移入の度合いや、物語の背景に関する情報が不足している分、結末のインパクトも鑑賞後の余韻も薄くて残念。
逆に言えばテンポが良くて、最後まで飽きずにテンション高く観ることができた。
とりあえず、原作がめっちゃ読みたくなった笑。

映画化までの道のり

原作『エンダーのゲーム』は出版当初から映画化の話が何度もあった作品だそうで。
はじめは原作者のオースン・スコット・カードと製作会社とで作品の方向性において衝突、企画段階で頓挫。
その次は、カード自ら脚本を書き、監督にウォルフガング・ペーターゼンを迎え、脚本のブラッシュアップをプロジェクトとして立ち上げたのにも関わらず、4年後・・・「やっぱ脚本書きなおしたわ」カードが全く新しい脚本を書き上げたところで頓挫。

昔からの原作ファンはもう映画化なんて無理だろ・・・なんて思っていたんでしょうか。
2009年に再度映画化企画が持ち上がり『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』の監督、ギャヴィン・フッドが脚本を担当。散々脚本にケチ付けてたのに、まさか脚本を丸ごと他の人に任せちゃうなんて・・・。そして出来た脚本は原作者だけでなく原作ファンも納得(?)の内容に。そして脚本を書いたフッドは監督も担当。
VFXはデジタル・ドメインという会社が受け持ち、脚本執筆段階からビジュアルイメージ作りに参加したとのこと。
(ちなみにデジタル・ドメインジェームズ・キャメロンが創設した会社らしいです。『タイタニック』とか『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』とかのVFXやったんだってさ)


紆余曲折を経ながら、原作を愛するクリエイター達の汗と涙の地道な努力で作り上げた作品のようです。

ただねー。やっぱねー『ゼロ・グラビティ』観た後だと比べてしまう・・・宇宙が舞台なので尚更。無重力の表現とかショボ・・・みたいな。まあ、正直ビジュアル面で推してくる映画では無いので、いいっちゃいいんですが・・・。そんな風に見てしまうことがちょっと悲しい。


魅力的な子役たち?!

ヒューゴの不思議な発明』のエイサ・バターフィールド、『トゥルー・グリッド』のヘイリー・スタインフェルド、『サイン』『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリン
と並べてみましたが、ぶっちゃけアビゲイル・ブレスリン以外知らん。ヒューゴもトゥルーグリッドも観てない。
彼らを知っている方々は、役者としての成長が見れて楽しめるんじゃなかろうかと。
あと、エイサ・バターフィールドは日本アニメファンらしく、『となりのトトロ』や『新世紀エヴァンゲリオン』が好きらしいよ。


プログラムの表紙裏、なんだかエヴァっぽいでした。

f:id:asabatabo:20140125014826j:plain


ストーリーとか

で、作品のストーリーについてですが、これはやっぱ良い!原作小説が海兵隊大学のリーダーシップ演習の教材に使われているというのもなんか納得してしまう「指導者」の物語なのです。


※以下、ネタバレは無いけど物語の内容にだいぶ触れているのでご注意ください。

昔々、50年前。地球はエイリアンに侵略されそうになりました。多大な犠牲者を出したその戦いから、ある一人の英雄が地球を救いました。
エイリアンは退散しましたがまたいつ襲ってくるかわからん怖い、ということで人類はエイリアンとの次なる戦いに備え、戦士を養成する学校をつくりました。
英雄にあこがれる若者達。エイリアン殲滅のため優秀な指導者を欲している大人たち。
そんな世の中に産まれた特例「サード(3兄弟の末っ子)の少年」エンダーがこの物語の主人公。
攻撃性の高い兄と共感力の強い姉を持った彼は、戦略家でありながらメンバーの気持ちも考えられる、ナチュラル・ボーン・指導者。秀でた者だけが味わう孤独に悩まされながらも、過酷な訓練やイジメに果敢に挑む彼は、あっという間に昇格。ゲームと称される訓練の数々をこなし、瞬く間に信頼されるリーダーとして成長していきます。
そして近づく実戦のとき。彼は戦争そのものに疑問を抱き始めます。敵の気持ちを理解できる彼は、どうすれば徹底的に相手を叩き潰すことができるかを知っている。故に、敵対する相手に同情し、愛情さえ抱いてしまう。
彼の選択は如何に!??


つまりサードチルドレンが、本当は戦いたくないよーっていう物語です。エヴァのシンジくんです。でもシンジくんは「君はすごいんだぞ偉いんだぞ」と言われても「うそだうそだ!みんな本当は僕のことなんて嫌いなんだ!」とウジウジ悩む、ネガティブ少年の話で、シャイな日本人男性は「あーわかるわかる」て感じでしたね。

エンダーは違います。「おまえすげえよ」て言われたら、相手を観察しながら戦略的に最も効果的なリアクションを選んで「ありがとうよろしく、君もなかなかだよ」みたいな、ミスターイケメンです。エヴァのカヲル君です。男も女も、こいつには敵わんと皆惹かれていく、そんな凄いやつです。
なので作品の楽しみ方も、エンダーが数々の窮地を救う毎に皆から信頼されていく様を、まるで我がことのように観て、エンダーすごい!!ってなるのが気持ちいい映画です。

そんなエンダーも、同情しすぎるという弊害があり、その心優しい彼の性格がこの物語のキーとなっています。
やっぱバトルスクールでの、チームワークを駆使して勝利を掴んでいくあのゲームの場面が一番面白い。原作でもあのあたりが一番の見せ場らしく、原作ファンはこの場面が映像化されたことに凄く感動したとか。
それにしても、分子分離装置とか、おそろしい。



原作『エンダーのゲーム』には『死者の代弁者』という続編があり、その後シリーズ化されているとのこと。
シリーズ化されてる時点で、主人公死なねえな、って思ってしまう安心感は、ちょっとつまんないよね。
最近SF小説読んでないな。読みたいな。


スタッフ&キャスト

監督:ギャビン・フッド
脚本:ギャビン・フッド
製作:ジジ・プリッツカー,リンダ・マクドナフ,アレックス・カーツマン,ロベルト・オーチー,ロバート・チャートフ,リン・ヘンディ,オースン・スコット・カード,エド・ウルブリッヒ
製作総指揮:ビル・リシャック,デビッド・コートスワース,アイビー・ツォン,ベンカテッシュ・ロッダム,テッド・ラビネット,デボラ・デル・プレト,マンディ・サファビ
原作:オースン・スコット・カード
撮影:ドナルド・M・マカルパイン
美術:ショーン・ハワース,ベン・プロクター
編集:ザック・ステーンバーグ,リー・スミス
衣装:クリスティン・ビーセリン・クラーク
音楽:スティーブ・ジャブロンスキー
キャスト:エイサ・バターフィールド,ハリソン・フォード,ベン・キングズレー,ビオラデイビス,ヘイリー・スタインフェルド,アビゲイル・ブレスリン,アラミス・ナイト,スラージ・パーサ,モイセス・アリアス,カイリン・ランボー,ノンソー・アノジー,コナー・キャロル,ジミー・ジャックス・ピンチャク,スティーブ・レイ・ダリモア,アンドレア・パウエル