【レビュー】ミッション:8ミニッツ(原題:Source Code)

この映画、とにかく予備知識なしで観てほしいです。
でも、映画は展開がわかっている方が楽しめる!という研究もあるそうです。

詳しくは知らないです。

とりあえずSF好きは観とけ!って感じの映画です。

簡単なあらすじ

誰も助からなかった爆弾テロ。爆発直前の8分間を体験できるプログラムの中で犯人を探る男、ジェイク・ギレンホール
早く犯人を見つけ出さないと、より大規模な爆弾テロを防ぐことができない。
彼は犯人を見つけることが出来るのか?!

 

簡単な感想

面白かったです!でもなんかモヤモヤします!
まず、スティーヴンスが「みんなを助けたい!」と思うまでの道のりが短いです。おかげでいまいちノリきれない。ミシェル・モナハンに抱く恋慕も、わかるようでわからない。観る側のテンションにもよるんでしょうが私は感情移入できませんでした。
もう少し乗客との絡みがエモーショナルに描かれていればなあ。てかもっと尺長くしてもいいんじゃないかなあ。そんなこんなで少し残念でした。
でも、好きです、この映画。

 

賛否両論のエピローグ、シカゴである訳

※以下ネタバレ

ベストシーンはやっぱり、ストップモーションのあの場面ですよね。
みんなが笑顔になるあの瞬間。あそこで物語終わらせてもええやろ、って多くの人が思ったでしょう。脚本を書いたベン・リプリーも、あそこで終わらせるつもりだったらしいのですが、脚本書いているうちに思いついちゃった、こっちの方がまとまってていいよね、みたいな感じでラストのエピソードを追加したらしいです。
映画的美しさは損なわれたかもしれないけれど、SF的ロマンはこの甘いエピソードのお陰で達成されています。

量子論の他世界解釈でみんなハッピー!って。素敵です。

そのラストに登場する銀色のオブジェ。タイムリープする際のフラッシュバックでも度々登場します。
映画鑑賞後に知ったのですが、このオブジェはシカゴでも有名なクラウド・ゲートと呼ばれるアート作品だそうです。つまり…このオブジェが劇中度々あらわれるということは「シカゴに辿りつける」ことを示唆しているんです。

監督もシカゴを舞台に選んだ理由に「クラウド・ゲート」があるからと言っています。これをフラッシュバックで登場させたのは「観客に気づかせたいため」だそうです。
んなもん東京に出てきたばかりの田舎人にはわかんねえよ!!ってことで、映画観ている最中は理解不能でした。このあたりの伏線も鑑賞中にちゃんと意識しながら観ると、ラストがもっと受け入れられたんじゃないかなって。


最大の謎

まぁ、なんだかんだいろいろあったけど伏線は回収され、きちっとスッキリエンドを迎え…ん?いや、ちょっと待てよ。なんか大事なこと忘れてないか?これ本当にハッピーエンドか?

ラスト、オブジェに映りこむショーンの顔…

あ!平行世界でショーン(歴史の教師)の身体乗っ取っちゃったけど、オリジナルのショーンはどこに行った?!新しい人生を踏み出すぜ!って感動的に盛り上がってるけど、ショーンは?!彼の意識は?!お前は都合よくテイキング・ライブスしてるけどさ!
気づいた瞬間に悪寒が走ります。説明が一切無いぞ。

答えは脚本のリプリーが音声解説で言ってました。

監督「ショーンどうなったの?」
リプリー「Shaun is dead(苦笑)」

で、死体スティーヴンスは未使用状態でまだ施設にあるっていうね。平行世界では犯人存命、ショーンだけ死亡。かわいそうに!

結局上手く消化する術が思いつかなかったのか中途半端に放置しちゃったおかげでこっちはモヤモヤ。あんまり追求しちゃいけないとこなのはわかってるけど、だったら追求する余地残さないでくれよー。
ブラピが死神やってたあの映画みたいに(感動は薄れるかもしれんけど)また元の魂に戻してあげる的な処置もアリな気がしたなぁ。
ちなみに平行世界とのリンクを断ち切るためにオリジナル世界のスティーヴンスは完全に死ぬ必要があったとのこと。リンクが続いたままだとこれまで同様またオリジナル世界に引き戻されてしまうそうです。なるほど。

 

類似作品

「リプレイされる仮想現実の女性に何度も逢ううちに惚れてしまって、主人公の男までその世界の住人になってしまう」
というめっちゃ似てる小説があるんですよ。読んだことは無いんだけれど『モレルの発明』っていう小説です。しかもその小説を元にした(という噂の)映画もあって、これが意味不明映画のパイオニア的存在『去年マリエンバートで』なんですよね。
(この辺については映画評論家の町山智浩氏のポッドキャストで知りました。)

あと『タイムマシーンにお願い』というSFテレビドラマシリーズがあるらしく(観たことないけど)これも似てる。
主人公は過去に時間旅行するのですが、このとき自分自身ではなく他人の身体を乗っ取る形でタイムリープするらしい。まさにスティーヴンスとショーンの関係と同じです。
監督はこのドラマ作品に敬意を表する意味で、ドラマの主演俳優スコット・バクラさんを映画の後半で声のみ出演させています。

他にも最近じゃTVゲーム・アニメの『シュタインズ・ゲート』とかも面白かったですね。

 

おわり。

 

スタッフ&キャスト

監督:ダンカン・ジョーンズ
脚本:ベン・リプリー
製作:マーク・ゴードン,フィリップ・ルスレ,ジョーダン・ウィン
製作総指揮:ホーク・コッチ,ジェブ・ブロディ,ファブリス・ジャンフェルミ
撮影:ドン・バージェス
美術:バリー・チューシッド
編集:ポール・ハーシュ
衣装:レネー・エイプリル
音楽:クリス・ベーコン
キャスト:ジェイク・ギレンホール,ミシェル・モナハン,ベラ・ファーミガ,ジェフリー・ライト,マイケル・アーデン,キャス・アンバー,ラッセル・ピーターズ